家庭教師って実際どんな感じで授業が行われているのだろう、と気になったことはありませんか？なかなか授業の様子を見る機会なんてありませんよね。

そこで今回は、私たちの実際の授業の様子をお伝えしていきたいと思います。今回紹介するのは、男子中学生（A君）の授業でのエピソードです。ある英語の問題集の中に、以下のような内容の短文がありました。

２人は映画を見たあと、レストランで食事をした。その後、２人はもう少しおしゃべりをするためにカフェに行った。そして、それぞれ帰宅するとすぐに電話をかけて、おしゃべりの続きをした。

問題集にはこの内容が英文で書かれており、それを日本語に訳す問題でした。上記のような日本語訳を書けば正解で、A君もそのように書けていました。

さて、ここからが本題です。私はA君に質問を投げかけました。

「ところで、この文ってどんな話だと思う？」

ちなみに、問題集に記載されていたのは上記の文章だけで、他の手がかりはありません。

一度、みなさんも考えてみてくださいね。

何となく若い男女２人で、恋人かそれに近い関係と思った方が多いのではないでしょうか。

ちなみにA君の回答は、

「近頃の若者は遊んでばっかりでけしからん、という説教的な文章ですか？」

でした。

私としては思ってもみない返答でしたが、A君の言わんとしていることは理解できたので、さらに２つ３つ質問をして彼の解釈を聞きました。すると、彼は頭の中で以下のような文章を想定していたというのです。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

私は日本の将来を憂いている。なぜなら、近頃の若者は刹那的で、将来のことをしっかり考えているようには感じられないからだ。先日も私の娘が友人と２人で遊びに行った時の話を聞いて、暗澹たる気持ちになった。娘から当日の様子を聞くとおおむね以下のようなものだ。

２人は映画を見たあと、レストランで食事をした。その後、２人はもう少しおしゃべりをするためにカフェに行った。そして、それぞれ帰宅するとすぐに電話をかけて、おしゃべりの続きをした。

娘は休日のたびにこのような生活をしている。親として娘が将来のことを真剣に考えているのか、不安でしかない。友達付き合いも大事だが、若いうちにしっかり勉強しておく必要があるのではないだろうか。（前後の文章はA君のイメージをもとに私が創作。）

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

どうですか、なかなか斬新だと思いませんか。A君の回答で興味深い点は２点あります。

まず、１つめは、２人が必ずしも恋人ではないだろうと判断している点です。

２点目は、全体を大人が子供の行動に苦言を呈する文章だと捉え、その一部に当該箇所が組み込まれているとした点です。

私としては、１点目、つまり２人の関係をどう捉えているのかということに興味があり質問をしたのですが、まさか２点目のような視点が出てくるとは全くの予想外で驚きでした。しかし、なるほどと思いました。当該箇所のみから判断すると、２人がどのような関係であるかも、文章全体がどのようなものであるかも、確定できないからです。

国語の西森先生に質問したところ、国語の文章を解くときには、想像したり思い込んでしまうことは避け、手がかりから類推しなければいけないとおっしゃっていました。ということは、「この文ってどんな話？」という私の質問は、他の手がかりがない以上、これだけでは様々な可能性が考えられ答を１つには決められないということになります。よってA君の考えも十分尊重される意見の１つということです。

このように、私たちが日々授業をしていると、生徒とのふとした会話の中に、Ａ君のようなユニークな意見に出会うことがあります。そんな時、私たちはその意見を十分に尊重した上で、なぜそのような考えに至ったのか、本人の話をしっかり聞いて理解しようと心がけています。

さて、この話がその後どのように展開していったのかについては、次回お話したいと思います。