プロ家庭教師のブログ

授業での1コマ(後編)

前回は、A君のユニークな意見を紹介しました。(詳しくは前編をご参照ください。)今回はA君のケースを参考にして、意外な返答に出くわした際、私たち大人はどのように対応すればよいのかを考えたいと思います。

そこで保護者のみなさまに質問です。もし、みなさんのお子さまからA君のような斬新な答が返ってきたとしたらどのようなコメントをしますか?

「何言ってるの、こんなの普通に考えたら若い男女のデートシーンに決まっているじゃない。」

と言いたいのを我慢して考えてみてくださいね。
以下は、A君の考えを聞いた後の私とのやりとりです。
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私:「なるほど~、先生はA君のような見解を全く予想していなかったけど、そういう考え方もあるよね~。面白い発想だよね~。ちなみに、先生がこの文章を読むと、パッと思い浮かぶのは若い男女でデートの話かなと感じるんだよ~。先生が若い時には、映画見て、レストランでおいしいもの食べて、家に帰っても電話するっていうのはデートパターンの1つだったんだよ。ところで、A君の理想のデートってどんなイメージ?」

A君:「うーん、USJとか?」

私:「お~、いいね~。」
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実はこのA君に対する私の返答、とても気を使って言葉を選んでいる箇所があるのですが、それはどこだかわかりますか?今回はせっかくですので、保護者のみなさまが今日から使えるちょっとした返答のコツをお教えしますね。

それは、冒頭の「なるほど~面白い~」と、中ほどの「ちなみに~」です。ではなぜ、これらの言葉がポイントなのでしょうか。

それはまず、「なるほど~面白い~」とプラスに受け止めることで、たとえ想定外の答であったとしても、あなたの意見を尊重していますよという意思表示をすることができるからです。

また、「ちなみに~」という言葉は、「でもね~」や「それより~」といった言葉よりもクッション性があるからです。些細なことですが、お子さまによっては、「でもね~」や「それより~」といった言葉に敏感に反応して、なんとなく自分を否定されたように受け取ってしまう場合があるので、私たちも気をつけて言葉を選ぶようにしています。

その後A君とは、ほんの20年前は今のようにSNSが発達しておらず、連絡手段はメールか電話くらいしかなかった当時の状況や、私が知っている範囲での現代の若者のデート事情など、ざっくばらんに意見交換をしました。

さて、A君とのやりとりを受け、同じ質問を別の生徒にもしてみたところ、色々な意見が得られたのでご紹介しますね。

・2人は友達同士(女子)でもおかしくない。でも男子2人だとちょっと違和感がある。(高校生女子)
・2人は彼氏彼女だと思う。私は家に帰ってまで友達とわざわざ電話しないから。(中学生女子)
・パッと読んだ時は恋人同士と思ったけど、よく読んだら何とも言えないと気付いた。(高校生男子)
・映画は恋人と家でゆっくり見たい、だって今はNetflixでいくらでも見れるから。(高校生女子)

最後の「家でNetflix」という意見は、一個人の意見にすぎませんが、もしかすると多くの若者の中で映画はもはや映画館で見るものではなく、家で見るものという認識に変わっているのかもしれません。私自身、勉強になる意見がたくさん出てきて面白く感じました。(ちなみに中高生の理想のデートは、USJとディズニーが多かったです。)

このように私たちは授業中のちょっとした会話を通して、生徒と私たち家庭教師がお互いどのような考えを持っているのかを確認し合いながら、信頼関係を築いていきます。その際、生徒がどんな意見でも自由に発言できる環境・雰囲気作りが大切ではないかなと考えています。たとえ意表をつくような意見であっても、そこに至る道筋を一緒にたどってあげることで、お子さまの素晴らしい個性や観察力を発見できるかもしれません。

これからの時代は、自分の意見をしっかり持ち、それを自分の言葉で伝えられる論理力・表現力が求められます。ご家庭でも、この質問を通してお子さまの世界や考え方に踏み込んでいってはいかがでしょうか。貴重な勉強の機会を提供してくれたA君にこの場を借りて感謝したいと思います。ありがとう!